整え設計室

ヨガ市場とピラティス市場の分析

健康志向・ウェルビーイング需要の拡大を背景に、ヨガとピラティスは「習い事」から「生活習慣インフラ」に近い存在へと進化しています。 本記事では、市場規模・成長ドライバー・競争の構造・リスクを整理し、事業機会(スタジオ/オンライン)をファイナンス視点で読み解きます。

※市場規模は調査会社ごとに「定義(スタジオ売上のみ/オンライン含む/関連商品含む等)」が異なるため、複数ソースのレンジで把握するのが実務的です。

概要:ヨガは裾野が広く、ピラティスは“スタジオ型”で伸びやすい

ヨガ:巨大市場 × 細分化

  • ・健康/メンタル/ストレス緩和など目的が多様で、参加者の裾野が広い
  • ・オンライン化が進みやすい(低設備・高コンテンツ勝負)
  • ・一方で差別化が難しく、価格競争に寄りやすい局面も

ピラティス:設備×少人数で単価が成立しやすい

  • ・姿勢改善/体幹/ボディメイクなど「目的が明確」で価値が伝わりやすい
  • ・マシン(リフォーマー等)×少人数運営で、需給がタイトな間は単価が保ちやすい
  • ・ただし設備投資とインストラクター供給がボトルネック

市場規模:定義差を踏まえた“レンジ把握”が重要

ヨガは「ヨガ市場(クラス/オンライン/関連サービス等)」として集計される場合もあれば、より保守的に「ヨガスタジオ/サービス」中心で集計される場合もあります。 ここでは代表的な公表値を並べ、実務で使いやすい形に整理します。

主要な公表値(例)

※単位はUSD。調査会社により定義が異なるため、比較は“参考”として扱ってください。

対象 規模(基準年) 将来予測 出典
世界:ヨガ市場 2023年:107.1B 2030年:200.35B(CAGR 9.4%) Grand View Research
世界:ヨガ市場(別定義) 2024年:60.14B 2032年:111.26B(CAGR 8.26%) Fortune Business Insights
世界:ピラティス&ヨガスタジオ 2024年:181.6B 2033年:388.4B(CAGR 8.38%) IMARC Group
日本:ピラティス&ヨガスタジオ 2024年:10.7B 2033年:25.1B(CAGR 8.90%) IMARC Group
日本:フィットネス施設動向(施設数) 2024年8月:12,543施設 新規開業(2023/9–2024/8)内訳も公表 矢野経済研究所(プレスリリース)

読み解きポイント: ヨガは「市場定義の幅」が広く、数字がぶれやすい一方で、複数ソースを見ても“中長期で成長”という方向感は共通です。 ピラティスは単体集計よりも「スタジオ市場」として捉えられ、出店拡大局面(日本含む)では成長期待が表れやすい構造です。

成長ドライバー:需要が増える理由

① 健康・ウェルビーイング志向

生活習慣病リスクや運動不足への意識が高まり、身体機能だけでなくメンタルケアも含めたサービスが選ばれやすくなっています。

② デジタル化(オンライン/アプリ)

ヨガは特に、オンラインクラスやデジタルチュートリアルとの相性が良く、参加のハードルが下がります(スタジオの補完にも)。

③ “目的の明確化”と単価上昇

ピラティスは姿勢改善・体幹強化などの訴求がしやすく、マシン×少人数の設計で「体験価値=単価」に繋がりやすい傾向があります。

ビジネス構造:スタジオは“KPI分解”すると判断が速い

スタジオ型事業は、ざっくり言うと 「売上=単価×稼働(枠消化)×継続」 で決まります。 特にマシンピラティスは設備台数で供給枠が決まりやすく、稼働率(予約枠の消化)が損益を大きく左右します。

ヨガ(スタジオ/オンライン)の典型KPI

  • ・新規獲得(体験→入会CVR)
  • ・継続率(解約率)
  • ・稼働率(クラス参加率、会員あたり利用頻度)
  • ・CAC(獲得コスト)とLTV(顧客生涯価値)

マシンピラティス(スタジオ)の典型KPI

  • ・設備台数(供給枠)と稼働率(枠消化)
  • ・単価(グループ/セミパーソナル/パーソナル)
  • ・インストラクター稼働(供給制約・品質)
  • ・顧客継続(回数券/サブスクの継続)

事業としての“強さ”は、立地や広告だけでなく、予約・決済・CRM(休眠掘り起こし、紹介、継続促進)まで含めた仕組み化で大きく変わります。

リスク:出店ラッシュの次に来る“稼働率低下”に注意

供給過多(競争激化)

スタジオが増えると、体験割引や初月キャンペーンの競争が起きやすく、稼働率が落ちると利益が急速に圧迫されます。

人材(品質)

インストラクター供給や育成が追いつかないと、提供枠の不足や品質ばらつきが解約率に直結します。特に高単価領域ほど影響が大きいです。

固定費(賃料)

都市部ほど家賃が重く、稼働率が数ポイント落ちただけで損益分岐点を割るケースがあります。出店判断は“稼働率感度”まで見るのが安全です。

オンライン代替

ヨガは在宅代替が強いため、スタジオは「コミュニティ」「指導者のブランド」「体験価値(空間/集中)」で差別化が必要です。

展望:伸びるのは“目的特化”と“運営の仕組み化”

  • ・ヨガ:巨大市場のまま、睡眠/自律神経/肩こり/産前産後/更年期など「目的特化」でニッチの勝者が増える。
  • ・ピラティス:マシン×少人数の拡大期は単価が成立しやすいが、出店が進むと“稼働率勝負”へ。強いのは標準化と人材育成に投資できる運営体制。
  • ・共通:予約・継続・紹介の設計(CRM)でLTVが変わる。広告より「解約を減らす仕組み」が利益を作る。

もし「スタジオを出すなら成立するか?」まで落とし込みたい場合は、 (単価×枠数×稼働率)−(家賃+人件費+減価償却+販管費) の形で試算し、稼働率の感度分析(例:60%→80%でEBITDAがどう変わるか)まで作ると投資判断が速くなります。

参考文献(出典)

  1. Grand View Research, “Yoga Market Size, Share, Growth & Trends Report 2030”
    https://www.grandviewresearch.com/industry-analysis/yoga-market-report
  2. Fortune Business Insights, “Yoga Market Size, Share & Trends”
    https://www.fortunebusinessinsights.com/yoga-market-113741
  3. IMARC Group, “Pilates & Yoga Studios Market”
    https://www.imarcgroup.com/pilates-yoga-studios-market
  4. IMARC Group, “Japan Pilates & Yoga Studios Market”
    https://www.imarcgroup.com/japan-pilates-yoga-studios-market
  5. 矢野経済研究所,「フィットネス施設に関する調査を実施(2024年)」
    https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3651

※本ページは公開情報に基づく一般的な分析であり、個別の投資・出店判断を直接推奨するものではありません。最終判断にあたっては追加調査と専門家の助言をご検討ください。