初めて財務を担当したときに大きな助けとなった一冊です。
会計は過去や未来を表し「利益」を扱うのに対し、ファイナンスは将来を表し「キャッシュ」を扱います。
利益は時に粉飾されますが、キャッシュは嘘をつきません。この本を通じて、その根本的な違いを学びました。
ビジネスの現場では利益に注目しがちですが、時折読み返すことで、お金を扱う者としての基本姿勢に立ち返ることができます。
▼印象に残ったエッセンス
【1. リスク】
リスクとは「危機」という言葉が示すように、機会と損失の両面を含みます。
株価が大きく変動するのは、リスク(振れ幅)が大きいことを意味します。
【2. 負債コストと株主資本コスト】
負債コスト=債権者が要求するリターン(利息)
株主資本コスト=株主が要求するリターン
負債コストは明確な数字で表せますが、株主資本コストは期待リターンを推計する必要があります。ここで用いられるのが CAPM です。
CAPM = リスクフリーレート + β × マーケットリスク・プレミアム
株主資本コストの方が重く、株主は最後に残余を受け取る立場にあるため、企業にとってより高い負担となります。
【3. 資本コストとWACC】
負債コストと株主資本コストはまとめて 加重平均資本コスト(WACC) として表されます。
WACC = D/(D+E) × (1−税率) × 負債コスト + E/(D+E) × 株主資本コスト
調達コストであるWACCを下げることが、企業価値向上につながります。投資家のリスク認識を下げ、株価の変動を安定させる(βを下げる)ことも重要です。
【4. ROICとEVA】
ROIC(投下資本利益率)とWACCの差が EVAスプレッド であり、これをプラスにすることが経営者の責務です。
【5. 企業価値とフリーキャッシュフロー】
企業価値は将来生み出すフリーキャッシュフローを現在価値に割り引くことで求められます。
ここでもWACCが重要な役割を果たします。
【6. 投資判断】
NPV法:NPV>0なら投資すべき
IRR法:IRR>WACCなら投資すべき
ただしIRRは規模を反映しないため、NPVと併用する必要があります。
▼まとめ
この本は、ファイナンスの基礎概念を「利益ではなくキャッシュを見る」という視点から整理してくれる一冊です。
財務の実務に携わる中で、数式や理論に振り回されず「企業価値をどう高めるか」という本質に立ち返らせてくれる大切な書籍だと感じます。
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